映画「14の夜」のレシピと14日間

February 3, 2017

 

 

料理人: 監督・脚本 足立紳   

    照明 安部力 カラリスト 関谷和久

    Bキャメラ兼フォーカス 山田笑子 

    インターン生 清野宏典 三輪橋翔

     助っ人 橋本彩子  

調理道具:SONY α7S  Panasonic GH4

    BlackMagic Pocket Cinema Camera

    ZEISS T:2.1 16/24/32/50/85/100mm

    Cooke Valotal 20-100mm Zoom 

BlackMagic Video Assist 2Kにてlog収録 

材料: オーディションで選ばれた活きのいい中学生4人 他  

 

調理法: 

準備と下ごしらえ 

 台所事情にもよりますが、撮影前の準備期間にオーディション、ロケハン、衣裳合わせ、その他充分に納得いくまで時間をかけて煮込みます。1987年の田舎町を舞台に、性への妄想を膨らませる中学生たちの姿をバカバカしくも真面目に描いた真夏の一夜、24時間の青春劇です。オーディションで選ばれた4人は、産地も年齢もバラバラで、クランクインより1ヶ月まえから足立監督は、リハーサルという仕込みを丹念に試します。同じ柔道部の同級生としていつも一緒につるんでいる関係性を作るために、普段からLINEグループで密にお互い連絡し合い、マブダチのようになるようゆっくりと熟成させます。 

 衣裳合わせでの事、足立組に「百円の恋」(脚本 足立紳)の朋友・武正晴監督が菓子折りを差し入れてくれました。箱を開けてみると分厚い封筒があり、日本アカデミー優秀監督賞の賞金を使ってくれという友情でした。これが後の調理でいい隠し味になりました。 

 

 

1日目 柔道場  

 タカシたち4人は、町に1軒だけあるレンタルビデオ屋でセクシー女優よくしまる今日子のサイン会が開催される事を知る。中学生の痛いほど真っ直ぐな性欲と無知。やり場のない怒り。自分の居場所に不安になる気持ちなどを泡立てて、風味としてあえてオールドレンズに、ブラックプロミストを和えて、80年代のイカくさい味付けをします。 

  

2日目 田舎道でエロ本をめくるタカシ  

 8月上旬とはいえ、台風や低気圧の影響などで天気は、うまく切り整えることはできません。前日の雨に続き太陽が顔を出さないのでカセットコンロでレンズ前に陽炎を作ります。風で炎が消えるのでフラッグなどで囲みましょう。 

 

3日目 夜の自動販売機前 

 レンタルビデオ前に向かう中学生たちの芝居は、基本的にワンシーンワンカットの長回し。 

足立監督も私もカット割りする事をあまりしない。私の師匠・水野尾信正キャメラマンは、足立さんがついていた相米慎二監督とデビュー作「翔んだカップル」で組んでいます。話によると相米さんがカット割り出来ないので、水野尾さんがいける所までいけ!と長回しになったと。その二人は、故人ですが14歳の年齢差であったようです。偶然ですが、私と足立さんも14歳差で監督デビュー作を組むことになり、何か運命めいたものを感じます。長回しは、その二人の師匠の意思を受け継いだおかげで、活きのいい素材を充分に活かす事が出来ました。 

 

 

4日目 タカシの家  

 今作品の監督補で参加した大崎章監督「お盆の弟」でも使わせて頂いた縁で再び渡辺家住宅を使います。群馬県の文化財に指定されて旧養蚕農家で味わいのある古民家の間取りと現代的な台所が同居する画がリアルな家族の縮図としてコクがでたと思います。 

 夕景。光石研が演じるダメ親父は、息子が隠し持つ裏ビデオを盗み見るダメっぷりをコダックラッテンフィルター81EFを使ってデジタル上のグレーディングでは出せない色合いで情けなさを醸し出しました。 

 

5日目 夜のタカシの家 

 タカシの姉が婚約者を連れて来た家族全員での食事場面。13ページに及び家族の確執や親父の反抗などユーモラスに食卓を囲んだ会話を3台のキャメラで一気に蒸し上げました。実際、昼間に暗幕で遮光して部屋の中は蒸し器です。 

 

6日目 タカシの部屋 

 ラストシーンで血と汗にまみれて朝帰りするタカシ。大事なシーンなので本当は最後に撮りたかったのですが、大人の事情でこの日に。2階の部屋のタカシと1階でドタバタしている家族を画面に入れこみ、ダメ親父の言葉と前夜の事件を振り返り笑い泣きするタカシの感情をすくい取る。テストとリハーサルをやると段取りっぽくなるのが嫌で、技術パートの準備ができたらワンカットで本番に臨む。それに答えてタカシは素晴らしい旨味を出してくれ、一発でOK! 

 

 

7日目 スクラップ置き場 

 優等性にも不良にもなれず、自分たちを限りなく無所属だと中学生特有のスクールカーストに悩む4人組の心情を表す場面は、脚本上では公園でした。中学生がたむろするに相応しい場所は、結果的に「お盆の弟」でもロケしたスクラップ置き場での廃車を秘密基地にしたことで

心が焼きつく場面になりました。もちろん長回しの炎天下で4人はこんがりきつね色に焼きあがりました。 

 

8日目 レンタルビデオ屋 

 セクシー女優よくしまる今日子のサイン会で夜12時過ぎるとおっぱいを揉ませてくれると、妄想4人組に寄り添うようにMOVIで、アダルトコーナーの暖簾の前まで追いかけました。まだDVDがないVHSビデオは、評論家の白井佳夫さんのコレクションを何百本もお借りして飾りました。DVD化されてないような貴重な作品もあり、暫し陳列棚を見入ってしまいました。貸出しカウンターのテレビには、「ビーバップハイスクール」や「ローマの休日」の映像を流してスパイスにしました。 

 

 

9日目 夜の怖い場所 

 タカシ達はヤンキー達に脅され、心霊写真を撮ってこいと「写ルンです」カメラを持たされる。実景の怪しい月は撮影中はでないと分かっていたので、クランクイン前に雲の隙間から見え隠れする14番目の月を狙って撮った。まるで半熟玉子のように。 

 

10日目 深夜の商店街 

 この日以降は全て夜で、17時出発で朝までの撮影となる。ヤンキーに囲まれ、おまけに幼なじみが属する暴走族との乱闘は、さすがにカットを割ってテンポ良く、空が明るくなる前に終わるよう2キャメラで素早く炒める。 

 

11日目 のぞき 

 タカシとミツルが駐車場やベンチのカップルを覗き見する。その後にミツルの意外な性癖に驚く。この場面は、カメラのホワイトバランス色温度を低くして、クールで冷徹な感じでチルドしてみた。 

 

 

12日目 怪しい屋台 

 ガダルカナルタカ演じる店主が謎の肉を喰わせる屋台。他の場面とは異質な不思議な空間にしたいので、照明を下からのフットライトにして怪しい雰囲気にした箸休めです。 

 

13日目 タカシの歩きと走り 

 歩きと走りは、撮影中に何度もトライして10分以上の分量は、撮ったのではないか?完成尺の都合でカットされる事があるが、足立監督はそこは特にこだわって残した。脚本家でもあるのでセリフに頼る部分もあるだろう。セリフのない肉体表現である走りや歩きが、シーンの間をつなぎのように埋めてくれた。 

 そしてクランクアップ。「14の夜」は実景日を含めて14日間で性春という衣をつけて揚げました。 

 

 

試食 

 もう昨年の12月24日から公開されているので、すでに召し上がられた方もいらっしゃるでしょう。反省点として、80年代でないものが写ってしまったり、言葉遣いが現代的だったりと多くのアクを取りきれてなかったですが、爆笑、熱狂、号泣と素材に合わせた調理ができたと確信しています。 

甘くて酸っぱくて、こってりした後を引く味です。冷めないうちに劇場でお召し上がり下さい。テキスト(パンフレット)は、よくしまる今日子の袋とじグラビア付きです! 

 

 

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